スタートアップの成功要因とは?
様々なスタートアップの成功話や諸々の書籍はもちろんのこと、実際に多くの成功したスタートアップの起業家からの話を聞いているとスタートアップが成功するには、大きく分けて2つのことをクリアーする必要があるのでないかと考えられる。
※ここであえて2つに分類しているが以下の2つのことがそれぞれに多くのクリアーすべきことを内包していることは言うまでもない。
- 解決すべき課題を見つけられるか
- 実行し解決する手段を体系化できるか
仮に本当に解決すべき課題を見つけられたならば、それを実行し解決する手段を体系化できるかどうかは起業家自身の素養ももちろん影響するが、努力次第では協力者や資金提供者が表れることは充分にあり得る事で、成功への道筋というのは多くのパターンが存在し、(まったく起業家としての素養がない場合は除く)解決すべき課題を見つけられたスタートアップはその道中はどうであれ結果的に成功していることが多い。
例えば、Airbnb。Airbnbは、安く部屋を借りたい旅行者と空いている部屋を貸したい人をマッチングするプラットフォームだ。Airbnbは、当初まったくといっていいほど上手くいっていなかった。だが、彼らはまったくあきらめる事をせず、鳴かず飛ばずの間は、オバマクッキーを販売するなどで何とかしのぎ努力を続け、YCombinatorからのサポートを受ける事に成功し、その結果数千億の時価総額をつけるまでに成長し、世界中に多数のクローンを生み出すほどの大成功を収めた。
一方取り組むべき課題がそもそも間違っている場合にはいくら努力をしても報われる事はない。失敗した多くのスタートアップは、彼らが発掘した課題が実は解決すべき課題ではなくその結果社会から必要とされていないサービスとなり、世の中から消えて行くのだ。(ピボットは課題の再発見なのでここには当てはまらない)
なぜ必要とされていない課題解決に着手してしまうのだろうか?
では、なぜ失敗した多くのスタートアップが必要とされていない課題解決に着手してしまったのだろうか?
知見が狭い、思い込みが激しい
課題を抱えるユーザー数、課題の深度を見込み違いのためサービスの価値がそもそも低い。起業家が、業界的な常識や地域的な常識とされることが他分野や他地域でも当然のごとく受け入れらると考えている場合などに起こり易い。
例えば、Pitapat。
Facebookのソーシャルグラフを使って自分の友人の友人までの範囲で好みの顔の男性もしくは女性がいた場合に通知し、相手に承認されれば連絡を取り合えるというサービスだが、創業者がサービス終了時に残しているコメント『比較されがちな出会い系サービスとの棲み分けを計る一方で両想いになる人が少ないというジレンマを抱えていました。』でも分かるように、Facebookを通じて出会いを求めていない、男性は利用するが女性は利用しない(サービスにコンセプトが男性中心で作られている)などから上手くいかなかった。
ニッチすぎるため課題ではない
課題としては存在するもののあまりにも対象とするユーザー数が少ないためサービスとしての価値が低すぎる場合。
例えば、日本人向けにスペイン語のオンラインサービスだ。RareJobを筆頭に雨後のタケノコのように現れたフィリピン人を使ったオンライン英会話サービスとは、サービス内容は一緒だが、対象とする課題の規模がまったく違う。そもそもスペイン語を学習する、したいと思っているユーザーの数が少なく、また今後もその数が伸びることは考えにくい。
課題解決型でないサービスに影響されすぎる
Pinterestのように既存のサービスから非線形的に生まれてきたサービスをみるとものすごい衝撃を受けてしまうためそれに影響されやすく、突発的なアイデアや考えでなんとか非線形的なサービスを作ろうと考えてしまう。しかしPinterestのようなサービスはほぼアートに近い。アートがそうであるように何を持って素晴らしいのかの判断は客観的な基準をもって判断することが難しくその成功はアーティストの素質によるところがあまりにも大き過ぎる。起業家にもアーティストの素養は必要だがそればかりに偏ると成功からは大きく外れてしまうだろう。
課題とは何か?
ではスタートアップが取り組むべき課題とは何であるか?その課題をどう見つけるべきなのか?
また起業家はどの課題に取り組むべきなのかを考えてみた。
課題の種類
課題には大きく分けて3つあると思う。
1.潜在的に課題として認識しているユーザ数が多い
多くの人が潜在的(稀に顕在的)に課題として認識しているが構造的な問題 社会的な問題 さらには思想的な問題となっているため解決が難しいと考えられている課題で、今ある技術の応用や発想の転換により解決が可能な課題であれば尚良い。
例えば、先に例を出したAirbnb、KickStarter(クラウドファンディングサービス),99Designs(デザイン専門のクラウドソーシングサービス)などがそれだ。
2.課題の深度が深い
局地的でパッと見は課題を抱える母数が少なく見えるので解決すべき課題に見えないのだが課題の深度が深いため局地的な集合体がその解決手段を媒介してまとまり易く総体的な母数が多くなり解決すべき課題となるケース
先日、Yahooへ事業売却したドリパスはまさにその典型的な例だ。「ドリパス」は、リクエストの多い映画を映画館で上映するサービスだ。上映されていない映画を映画館であえてみたいというコアなユーザーの課題は深く、母数自体は少なくともコアユーザーが集まってき易く活発に利用してくれる。
3.上記二つを満たす課題
言うまでもなく上記二つを満たす課題が見つかる事が一番望ましい。だた、このケースの課題を見つけられることは非常に稀だ。なぜなら、そのような課題があるのならば社会的に非常に大きな問題であるため多くの人に顕在的であることが多く、既に解決されているもしくは解決に向かって多くの人が動いているはずだ。もし万が一にこうした課題が残っているとするならば、技術的な進化や環境の大きな変化など外的要因がないと解決できないような課題であることが多く、そうした課題を解決する手段を生み出す事は非常に難しい。よっぽどの素養がない限り多くの起業家に取っては、手に余る課題となる。
また、上記からあえてもう一つ分けてみたのが以下の課題だ。
新たなサービスや事業が生み出す課題
1.2のいずれにも含まれるが、新たなサービスや事業の先に線形的に存在する課題だ。特定の課題を解決した後に生まれる課題だ。補完材的なサービスがその課題解決にあたるケースだ。
例えば、Webstagramがそれだ。Webstagramは、Instagramをウェブで閲覧できるようにしたサービスだ。本家Instagramがウェブサービスを提供していなかったために(後にサービスを提供したが)そのサービスは多くのユーザーに利用される事になり、月間数億ビューを記録するようなサービスとなった。
どのタイプの課題を解決するべきか?
これは一概にはもちろん言えないが、上記の課題と起業家自身の現状(自分の知識、経験、人脈、プランBやZを持っているか、情熱、年齢など)とを比較しどのような課題を探すべきかを考える事が最も重要ではないかと思う。
例えば、3のような課題として、気軽に宇宙旅行を実現するサービスを作りたいと考えた場合、もちろん極端な例であるが、宇宙工学に精通している、多額の出資をしてくれる投資家とのネットワークを持っているなど多くの要素が必要だ。SpaceX社のCEO/CTOのイーロンマスクには適した課題解決(だと思う)だがほとんどの起業家には当てはまらない課題だ。
まとめ
スタートアップが取り組むべき課題や課題解決について改めて考える機会ができたので備忘録も含めまとめて見た。
課題が発掘が最も重要なこと、課題発掘のフレームワーク的なことが分かっても見つけるのが難しいのがスタートアップが取り組むべき課題で、そのこと自体も課題で。。。と禅問答的な感じになってしまった。
参考文献:
スティーブブランク:アントレプレナーの教科書
エリックリース:りーんスタートアップ
などなど